山中 ご来場いただき、ありがとうございました。アフタートークっていうものをやってみたくて、まだ2回目なのでご容赦くださいますと幸いです。企画の山中志歩です。
石渡 演出の石渡愛です。
山中 はえぎわの主宰、劇作家で演出家で俳優のノゾエ征爾さんです。
ノゾエ ノゾエ征爾です、宜しくお願いします。
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山中 まず、転校生は1994年に青山円形劇場で平田オリザさんによって上演されまして、これまでに飴屋法水さんや本広克行さんらによって再演されています。実際は21人の女子高生だったのですが、今回は10人にして、色んな俳優たちでやったらどうなるんだろう?と思い、企画しました。ノゾエさんは一万人のゴールドシアターやはえぎわの公演でもそうなんですけど、この俳優にこの台詞、この行動をさせたらどう影響するのかっていうセンサーみたいなものがめちゃくちゃ鋭くて、あと、単純に私の尊敬している大先輩でもあるのでお呼びさせていただきました。ノゾエさんいかがだったでしょうか。
ノゾエ そうですね、女子高校という設定に、老若男女が配役されてることとか、舞台空間の周りもちょっと夜に見えたりとかして、すると、夜間学校みたいに見えたりもして。いやー面白かったです。うん。「距離」について色々と考えさせられました。戯曲上における「女子の高校生」という設定に対して、各俳優がそれぞれに距離感がある。それをあえて距離があるままに進行させていて。肉体性にしてもなんにしても。すると、戯曲に元々あった空気感とか、言葉の意味合いが随分と変わってきているように感じて、距離から来る摩擦とか、変容とか、面白かったですね。その何が、狙いだったのか分からないんですけども。あえてこうしたっていうのは何かありますか?一言では言い表せないと思うんですけど。
山中 どうですか?
石渡 この企画自体、山中ちゃんが、いろんな人、男女や年代も別だし、女子高生といういわゆる女の、普通の体で若い人だけで転校生っていうセリフを言うんじゃなくて、いろんな背景を持った人がこのセリフを言ったら、もっと色んなものが、面白く見えてくるんじゃないか、どうなるんだろうっていうので、そこが出発点なので、そこを最大限活かせるような形で、演出しようって思いました。
ノゾエ 女子高生にはもはや見えないっていうか。むしろ見えるようにしたいとかもないですよね?
石渡 そうですね、結構襟の力が強くて、後半の方とか全然物語に見えてくるというか。
山中 女子高生に見えるっていう感想もいただいていて…
ノゾエ ああ、そうですか。いや見えないですけどね
会場内 笑
ノゾエ いや、もちろんそう見える瞬間もありました。笑 まあ今あえて言った部分もありますけど。あの、うん。それ(女子高生に見えないこと)がよかった、好きだったっていうか。
石渡 ああ、
ノゾエ なんでしょうね、枷があったことが良かったんじゃないかな、と。その枷、ルールを壊していくことによって、戯曲の言葉が自由になっていった部分もあるんじゃないのかなって思ったりして。
石渡 枷というのは女子高校生が言うっていう?
ノゾエ そうそう。それっぽい人たちがやるという。これまでの「転校生」を観てないので、逆に観たくなったなあっていう部分もあって。本当に今日の俳優の皆さんがそれぞれのね、そのままで、ね、されてるから。
山中 それはすごい、(頷く)
ノゾエ ね、こだわったんだなって思って。
石渡 それはやっぱり、どうしてもセリフとの距離が最初の方とかめちゃくちゃあって。で、なんか逆に、いわゆる女子高生っぽくちょっと盛り上げて無理やり寄せて行ってみようとか
山中 そうそう
石渡 距離感を色々調整していって、今くらいのところにだんだん落ち着いて行ったっていう感じですね。とにかく、無理はしないように、無理はしないように、ということで、ゆっくり言ってくださいって言うことで。
ノゾエ うん、そうですね。視覚の強さがやっぱり強くて、やっぱりおじいさんはおじいさんだしなあって。設定の年よりはるかに上で、その、多くのことを経たであろうっていう体から出てくると、言葉がやっぱり全然違うものになるなあって。最後の2人のところも、女子高生の2人に見えたり、男女に見えたりしましたね。
石渡 いろんな景色とかいろんなものにぐるぐる見えて、いろんなものが立ち上がってて結構、
山中 最初の一場の、癌でチューブだらけで大変みたいなのを女子高生が言うのと、あの年齢の方々が言うのとではグロテスクの差が全然違って聞こえるんだろうなって。
ノゾエ 多分オリザさんも書いた時は、それはあえての別の距離感でもって、お客さんに届けるって言うことをしてたと思いますし、とすると、この戯曲が本来持っていたエネルギーと違うエネルギーを持っていった瞬間もたくさんあったように思います。オリザさんはご覧になってる?どんなことを言っていたんですか?
山中 戯曲がいい、良い本だなって言っていました。
会場内 笑
ノゾエ 戯曲を変更したのは誰がしたんですっけ?
山中 (手を上げる)
ノゾエ あ、山中さんが。
山中 ほぼ、カットとかはせず、調整しました。
ノゾエ 今日の、出られていたみなさんは、それぞれどういった距離感なんですか?劇団でのキャリアだとか。
山中 青年団の大先輩、川隅さんだとか根本さんとかもいらっしゃれば、五島ケンノ介さんっていう池田亮君のお父さんも出られています。ゆうめいっていう劇団の。
ノゾエ ああ、そうでしたか、それはそれは。普段はどんな感じなんだろうとかを思って。普段の距離感、役との距離感、それと、お客さんとの距離感も興味深いと言いますか、この企画を最初に立ち上げた時の衝動っていうのがあったと思うんですけど、で、実際にこうやってお客さんの前で上演されていく中で、山中さんだったり皆さんの中で、何か変わっていくものってありましたか?
山中 でもやっぱりお客さん入って毎回、わあああって裏でなってますね。
石渡 本当にやっぱり、言う人によっても言葉の距離感が全然変わってくるし、それはどんな舞台でもそうなんですけど、聞く人によっても全然違うなって。なので回によって全然違いますね。
ノゾエ こんな感触になるといいなとかありますか。
山中 個人的にずっと考えていることなんですけど、例えばロミオとジュリエットがあったとして、ロミオは美少年がやって、ジュリエットは美少女みたいな舞台が多いじゃないですか。でも、これからのことを考えると、マイノリティの人とか、いろんな人がもいらっしゃる中で、何故美少年と美少女じゃないとダメなんだろうっていうのをずっと、疑問に思っていて、それで、女子高生、完全に若い女の子、かわいい、みたいなのでまとめられているんですけど、それを今回の企画を通して、俳優ってもっといろんなことができるはずだぞっていうのを、示したかったな、と。
ノゾエ 観てる側としても?
山中 そうですね、誰でもどんな戯曲でもやってもいいんじゃないのみたいな。
ノゾエ そうですよね。…演出の方って変わられたんですよね?
石渡 そうですね
山中 はい、ただこの企画は一年半前から始めていて、ずっと演出助手で石渡さんも一緒に話していたので、考え方っていうか
石渡 演出っていうか、とにかく俳優の芝居で作るっていう、のはずっとあって、あとはこのキャスティングでどう世界観を成立させるか、っていうことを考えていきました。
山中 こう試行錯誤して、色々ありましたね、最初のころ、でもそうじゃないかもしれないねって。それこそ、宣伝美術を考えてくれた松橋くんと黒澤多生くんと皆んなで舞台美術を考えたり、
石渡 パソコンでいろいろ作ってくれてね、みんなで話し合って。
ノゾエ ネット(zoom出演)のね、あれも面白かったですよね。
山中 (zoom出演している)イムさんが、一年半の間に、本当に日本に入国ができなくなってしまって。でも普通の学校でもいるじゃないですか。留学生が入って来れないっていう。いるから、いいじゃんっていう感じで、やりました。
ノゾエ 韓国からってことですよね?
山中 そうです。
ノゾエ そういう、やむを得ない事情も、ちゃんと作品の力にしていることが、とても演劇的で良かったというか。なんか観ていてどんどん目が冴えていく感じがしましたね。
山中 最初はちょっと眠たかったですか?笑
会場内 笑
ノゾエ いえいえ笑。やっぱりこう最初、チューニングに時間がかかるじゃないですか。どこに自分が、関心を寄せていくのかなっていう。
石渡 とりあえず、ここが教室になればいいかなって。照明も最後の方は蛍光灯になって、お客さんの顔が見えてしまう、そういう冷めた空間というか。
山中 ノゾエさんだったら転校生をどう演出しますか…?
ノゾエ えっ。いや、どうだろ笑。でも、転校生の方とかって面白いな、って思うんですよね。この転校生も、なんか不気味な入り方しましたよね。あの彼、あの子の言葉の距離感も面白くて、転校生は普通そんな言葉のトーンで入らないぞっていう笑。
山中 あ、そうだ、ノゾエさんってすごくいろんなところに転校されてるんですよね
ノゾエ そうなんですよね、小学校の時ですけど。7校行ってるんですよ
石渡 ええっ
ノゾエ この転校生は、あんなふてぶてしくて、大丈夫かなあってところから入っていくから、面白い。どう演出するのがいいか、こうしたほうがいいのになあ、っていうのはあんまりなく見てました。(女子高生の記号だったセーター服の襟を、どこかで何気なく外して、何気なく畳ませたりしたかもしれません。と帰り道にふと思いました。)
石渡 結構いい時間になってきたみたいなので…
ノゾエ 公演はいつまでなんですか?
山中 27日までです。
ノゾエ いや、本当、最後までどうぞご無事に。
山中・石渡 ありがとうございます。
山中 長時間、ありがとうございました。
石渡 本日のゲストはノゾエ征爾さんでした、どうもありがとうございました!
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[舞台写真]撮影:三浦雨林
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